—-「勉強したくない」理由を、突き詰めた結果ついに実験してしまった東大生の実験感想日記—-
勉強できないのは、僕のせいじゃない
35単位。
これは、僕が東京大学の2〜3年の1年間で落とした単位の数です。
(ここでエモい音楽が流れる)
お父さん、お母さんへ
この記事をいつも読んでくれているのは知っています。「単位を落とした」とは言いましたが、具体的な単位数は言っていませんでした。ごめんなさい、35単位です。ちょっと、あまりに多すぎて、直接言いたくなかったのです。ごめんなさい。今度帰ったら、ちゃんと口で言います。今度から、ちゃんと勉強しm…
と言いかけて僕は口を閉じました。
僕には、ちゃんと勉強しようという気概があったし、実際(ちょっとは)勉強していた。でも、椅子に座り机に向かうと、どうしても体が退屈で眠くなってきてしまうのです。
これは、僕のせいではない。
これは、すべて学習環境が悪いのだ。
というところから、実は、僕の「学習環境」への飽くなき探究は始まったのです。
(お母さん、もしあまりに心配だったら電話ください…。ちゃんと現状を説明します m(_ _)m )
やっぱ、やってみるしかない
やっぱり、勉強は内容もやり方も楽しいものでなければならない。ということで、僕は「とにかくやってみる」の精神で、本郷三丁目のビルの一室を借り切り、ダンボールを10枚買い、友達を巻き込んで
『様々な勉強法を試す会』
を開いたのです。

↑Facebookでの募集。みんな「いいね」はしてくれるけど、参加はしてくれない。悲しい現実。よくある現実。しゃーなし。
具体的な企画内容は以下の通り。
1. 普通に椅子に座り、机の上の紙を使って勉強
2. ダンボールに囲まれた状態で、ダンボールに書き込みながら勉強(Facebook投稿の案)
3. 自分の声が0.5秒程度ディレイして聞こえる状況で、普通に勉強
4. 自分の声が0.5秒程度ディレイして聞こえる状況で、ダンボールに囲まれて書き込みながら勉強
以上、4通りの勉強法を、それぞれ30分間程度行い、最後に友達と2人で感想共有してみました。
ダンボールの中で勉強すると、忍耐力があがる
ダンボールに囲まれた状態で勉強する状況(2)では普通の勉強(1)よりも、精神的苦痛が少なく、「難しいな」と思った内容に長時間挑み続けることができました。
すなわち、学習環境が、僕たちの忍耐力をサポートし、少しだけ勉強を楽にしてくれたのです。
理由は定かではないのですが、2人で感想を話していたところ、
少なくとも、ダンボールに囲まれているという環境が”興味深い行動”を誘発していたことが明らかになりました。それは、
「わからない」と思った部分につきあたったとき悩んでもわからなければ、ダンボール囲いの別の箇所に移動し、わからない箇所を少し飛ばして、再度勉強を始めた。
という行動。
2人とも、先に進んでいるうちに気付きがあり、「あ、さっきわからなかったあそこ、ああいうところだったのか」と難なく理解できてしまうこともしばしばありました。


↑レンタルスペースと、ダンボールの囲いの様子。まさか誰も、こんなに綺麗なレンタルスペースをこんな風に使われているとは夢にも思わないでしょう。
結論として、(1)と(2)を比較して立てた仮説は以下の2つ。
1. ダンボールなどの広い紙で勉強する際は、「わからない感覚」に対する耐性をあげる
2. 「立つ」「移動する」という行動は、学習者に「次にチャレンジする」活力を与える
ノートだと、分からないからといって、ページを飛ばしたり闇雲に次のページに進んだりしないはずです。
それは、ノートのページをめくるという行動が、「分からないことを放置して先に進む」という感覚を誘起するからではないでしょうか?
ノートでは、ページをめくると前のページを視認することはできません。
これが、よく言われている学習者の「分からないに固執し続ける」という行動を支援してしまっているのではないかと思います。
対して、ダンボールのような広いものには「めくる」という概念がありません。
全てが一望できる状況なので、抵抗なく「分からないこと」から離れて次に進むことができたのだと思っています。

↑勉強後のダンボールの様子。めちゃめちゃランダムな順番に書き込んで勉強している。
また、さらに面白いことがあります。
ダンボールの壁に書き込んでいて「分からない」と感じたとき、2人とも「今までのポジションからさらに高い位置に移動しようとする」傾向があるように感じました。
例えば、座っているポジションから立っているポジションへ、立っているポジションから斜め上へ移動、など。
めちゃくちゃ感覚ですが、「座る」より「立つ」方がなんとなく切り替える感ありますよね。そのせいかなぁ、とか思ってますがこちらは深い考察ができていません。コメントください。
ディレイは諸刃の剣
自分の声が0.5秒程度ディレイして聞こえる状況
ってどうやって作ったの?と思われそうですが、簡単です。
2人の携帯でLINE通話をして、片方の携帯をマイクとして使って声を入力させ、もう片方の携帯にイヤホンをさして出力として使った、という超・現代的かつシンプルな方法です。
これは、WiFiの通信速度がある程度遅いことを利用しています。
さて、携帯を2つも投入して行った(3)と(4)の実験。
結果、ディレイは諸刃の剣だとわかりました。
というのも、試した4つの方法のうち、一番楽しく勉強できたのは(4)で、一番集中できなかったのは(3)だったのです。

↑「画像多いほうがいいよ」と言われたので、文脈無視の写真。半年ぶりに数学を勉強して、満足げなご様子の僕(工学部専攻)。
(3)では、ディレイはただのノイズでした。最初は、「せっかくだし」と普段よりも独り言を多めに話しながら勉強していたのですが、2人ともだんだん喋らなくなり、僕は途中でギブアップ。
(4)では、僕は(2)とそこまで感じ方が変わらなかったのですが、友達はもう独り言言いまくり。
「あ〜〜〜〜〜〜〜〜〜!こういうことか〜〜〜〜〜〜〜!」
とか聞こえてきていました。(声量が独り言レベルじゃない)
あとで感想を聞くと、「自分の声を聞くことで、理解が深まったり納得考えられたりした」とのこと。
つまり、ディレイは「新しい発見や学び」ではなく「学んだことの納得」に使えるようなのです。
まとめると、
秘密基地気分でダンボールで勉強するのは最強だし、携帯を二台使ってイヤホンで自分の声を聞くとさらに最強(になりうる)
ということになります。
誰しも一度は憧れたダンボール秘密基地に、こんな効果があるとは。

活かし方
長いのにここまで読んでくださってありがとうございました。
最後に、注意だけ。
今回の”実験”はサンプル数2ですし、質問項目もあやふや、なんの理論に基づいているわけではありません。ただ、僕と友達が自分たちの「楽しい」に素直になって勉強してみた結果です。
認知特性とか、勉強する内容とかたくさんのuncontrolledな要素がある環境のままやったので、この記事をご家族に見せて「ダンボール秘密基地作る!」とか言わないでください。お願いします。
まあ、ただ「何も椅子に座ってノートに書き込む」だけが勉強ではない、という1例を示せたかなと思っているので満足です。
これからも引き続き、勉強できないのを学習環境のせいにしていきたいと思います!では!